細かい岩々に埋もれた私は、しばらく気絶していたと思います。
その時、私は何か懐かしい気持ちを感じていました。
遠い昔に、私が公園で転んだときに姉が慰めてくれていた時のことを・・・
・・・気が付いた時、岩の陰で少女は私を介抱をしてくれていました。
「・・・あんたはなかなか無茶をするな・・・そんな無茶を続けると命がいくつあっても足りないぞ。」
「でも、私はあなたが助かって良かったと思っていますよ。」
「・・・そんな満面の笑みで答えられたら、もうあんたのことを責めることはできないな。もうしばらく休んでから出発をしようか。」
足腰に疲労を感じていることもあり、私は大人しく横たわりながら少女に聞きました。
「貴女はなぜ現世に帰ろうとしなかったの?」
少女は少し答えるのに戸惑いながら静かに答えてくれました。
「・・・別にこの世界が気に入っている訳ではない。ただ、私は現世に帰るところがもう無いんだよ。私はこの世界に長く居すぎてしまった。」
続けて少女は言いました。
「私には現世に帰る理由が無いんだ。こちらの世界に居たことによって、過去の記憶は朧気だし、自分のことも分からない。」
「・・・でも現世に帰れば、貴女のことを知る人にも会えるかもしれないし、何か思い出すかもしれない。」
「あんたの世界が、私の住んでた世界と全く同じ保証があるかい?」
私は言葉に詰まってしまいました。
「・・・私のようになりたくなかったら、あんたも帰られるときに早々に現世へ帰ってみるべきだ。」
私は、少女の言うことを頭の中でグルグル考えながら少し休むことにしました。
休憩を取った後、私たちは湖のほとりにつきました。
「さて、湖には着いたが私は現世に帰る方法も分からないし、力になれるのはここまでだ。」
さらに少女が答えました。
「あんた、まだこの世界に来たばかりなら、どうやってこの世界に来たかも覚えているんじゃないか?」
「・・・丑三つ時に合わせ鏡・・・」
私はふと思い出して呟きました。
「・・・合わせ鏡???関係あるのか?」
私はポケットから手鏡を取り出しました。
「合わせ鏡をする際、自分を被写体にする場合にはもう一つ鏡が必要になるの・・・」
私は湖を指さしました。
「鏡で照らすのはおそらく湖・・・湖と合わせ鏡するんだわ!」
私と少女は湖まで駆け寄りました。
「いい感じに月が出ているな・・・これならば水面に合わせ鏡ができそうだな!」
少女は興味深々で水面を覗きこもうとした時・・・水の奥から何かがこちらを見ていました・・・。