廃村山荘誘拐事件 その7

白鳥さんは鉈を放棄し、過去について淡々と語り始めた。

「惰気有山荘は、父と母が経営をする結婚式に使われるくらい人気の山荘だったわ。私はお嫁さんの花嫁衣装を見るのが大好きだった・・・。花嫁衣装はそれはとても華やかで私も嬉しくなるくらい綺麗なものだった。

だけど、バブルの崩壊、財政難で従業員は減り経営は厳しくなっていったの。母は病気で死に、父も過労が祟りおかしくなっていった・・・。」

「ある日、山荘に泥棒が入ってきたの。はじめは父も鉈で脅すくらいの気持ちで泥棒に向かっていったと思うの。・・・だけどおかしくなった父は鉈で泥棒の首をはねた。飛び散る血しぶきを見て私は恐怖を感じた・・・。だけど心の奥底ではこう思ったわ。なんて美しい鮮血なんだろう・・・と。」

「泥棒の被害はその後も何度かあったわ、その度に父は鉈で泥棒を殺していった。その様子に怯えつつも父を止めたいと私は強く感じていた。私は父に飛びついたわ『もう止めましょうお父さん』って。その時、父ともつれ合って父は階段から落ちて死んでしまった・・・。私は父を殺してしまった・・・それと同時に私はこう感じたの。殺し方がまったく美しくない・・・と」

「両親のいなくなった私は、叔母の家に移ることになったわ。それからは定期的に悪夢を見るようになった。人を美しく殺せなかった、またあの美しい血しぶきを見たかった、好きな花嫁衣装を着たかった、これらの後悔の念が私を蝕み続けたからよ。」

「大人になり、久々に山荘に訪れたら、そこは誰かが踏み荒らした形跡があったわ。それを見て、父の気持ちが少し分かったの・・・。家族の思い出の地を荒らすな!・・・って。」

「過去の後悔の念から私が殺人鬼になるのは容易だった。花嫁衣装を何重にも着込み、人を殺す度に私から負の要素が抜ける様を感じたわ。」

白鳥さんが口に何かを入れた・・・あれは・・・毒だわ!!!

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