俺は嵌められたのか・・・いや、嵌める気なんてさらさら無さそうなんだけどさ・・・
「フェリック様にはこんな服もお似合いだと思います~」
ルナさんがウキウキで俺の服を選んでいる。
ああ・・・もうどうにでもしてくれ・・・。
ことの顛末はこうだった。
ルナさんは実は魔族の姫で、魔王は彼女の兄に当たるらしい。
彼女は魔王の側近をしており、勇者は彼女の兄を追い詰めた張本人だったのだ。
そこでだ、ルナさんは勇者には顔を知らせており残党狩りとして彼女の命を狙っていたのだ。
つまり・・・俺の探していた魔王軍の残党はルナさんのことだったのだ。
じゃあ彼女の目的は何だったのか・・・彼女も彼女で魔王軍の復活を企んでいたらしく、魔王軍を率いる魔王に相応しい人間を探していたのだ。
「あ~いやー!!とってもカッコイイですぅ!」
ルナさんは一人で盛り上がってる。
ギルドでは今頃、魔王軍の側近を匿ったオレを指名手配しているだろう。
俺は迂闊に町にも入れないお尋ね者となってしまった。
こうやって俺の初クエストは失敗に終わる・・・それどころか、世界の敵として生きていくことになりそうだ・・・。
「・・・向いてないと思うよ・・・俺・・・魔王・・・」
「あら、私はそんなことないと思いますよ。」
ルナさんは手を止めて答えた。
「フェリック様の優しさ、ワナ発見の鋭さ、状況に応じた決断力、ちゃんと見てましたよ。」
ルナさんはにっこり笑い、なぜか俺は少し安堵してしまった。
・・・そっか、ギルドではさんざんバカにされたけど、この子は俺の適正をちゃんと見抜いていてくれているのかな・・・。
「いっそのこと、魔王になってみるのも良い・・・かもな」
ルナさんの顔がぱぁ~っ!と明るくなった。
「はい!フェリック様!私はどこまでも着いていきます!!!」
彼女の笑顔を見て、俺の未来が一気に開けた気がした!!