「我妻君!白鳥さんを止めて!」
私の叫びは空しく響き、白鳥さんは血を吐き倒れた。
私と我妻君は白鳥さんのもとに駆け付け、白鳥さんを嘔吐させようと試みたがうまくいかなかった。
白鳥さんが血を吐きながらも話を続ける。
「私が月ヶ瀬さんを呼んだのは・・・私を止めてくれると思ったから・・・私の中の善意を肯定してくれると思ったから・・・私をただの殺人鬼としてではなく・・・普通の人として・・・死なせてくれると・・・思ったから・・・」
「ダメよ!白鳥さん、あなたは生きるのよ!今からあなたの成りたい自分に成れるように人生をやり直すの!我妻君なんとかしてよ!我妻くん!!!!!!」
「ありがとう・・・響子さん・・・」
彼女は笑顔で息を引き取っていった・・・
・・・山荘の事件からひと月が経った。
山荘からは数人の死体が見つかり、警察の捜索も入ったけど、犯人の自殺ということもあり、あまり大規模なニュースにはならなかった。
このまま事件は風化されていくと思うけど、次の仕事に手が付かない状況だった。
我妻君が私に向けて言った。
「・・・白鳥さんの命は助けることはできませんでした。でも白鳥さん本人は救われたと思えます。白鳥さん、亡くなった時は笑顔でしたよ。それは紛れもない響子さんの力だったと僕は思っています。・・・さぁ、コーヒー飲んでいつものネコ探しに行きましょう!」
我妻君の入れてくれたカフェモカはいつもより甘く感じた。